フェンシングは、ヨーロッパの貴族文化から発展した剣の格闘技として知られています。細長い剣を手に、防具を身に着けた選手同士が一対一で対戦し、相手の体を突くことでポイントを競う競技です。スピード感と瞬時の判断力、そして美しい戦闘フォームが魅力的なため、動くチェスとも呼ばれています。
この記事では、フェンシングの剣の種類、ルールやその見どころについて詳しく紹介します。
フェンシングの起源と歴史
フェンシングの起源は、中世ヨーロッパにおける「剣術の訓練」にまでさかのぼります。もともとは戦場での剣の扱いを学ぶ武術でしたが、戦場での闘いの道具が火器や銃に様変わりすると共に、フェンシングは徐々に上流階級が嗜む剣術として後世に伝わっていきます。
1911年には、国際フェンシング連盟がパリに設立され、スポーツとしての近代フェンシングが始まりました。
日本には明治時代に伝わり、警察官の訓練などにも取り入れられました。現在では全国大会や学生大会も盛んに行われ、フェンシング人口は着実に増えています。
日本でのフェンシングの普及
日本におけるフェンシングの普及は、ここ10〜15年で大きく進展しました。その背景には、著名な日本人選手たちの国際大会での活躍が挙げられます。
特に、2012年ロンドンオリンピックで日本代表チームが男子フルーレ団体で銀メダルを獲得したことは大きな転機となりました。その後の2021年の東京オリンピックではエペ団体で金、2024年のフランスオリンピック団体競技でも金メダルを獲得しています。
こういった日本選手の活躍により、フェンシングは日本でも一気に知名度を上げ、若い世代を中心に競技人口が増加しています。
フェンシングの剣の種類は?
フェンシングは、使用する剣の種類によって「フルーレ」「エペ」「サーブル」という3つの種目に分けられ、この3種類の剣の名前がそのまま種目名となります。
それぞれのルールや有効打突の部位が異なり、戦い方の特徴も大きく変わります。
初心者の多くはまずフルーレから始めますが、経験を積むと自分の得意スタイルに合わせて種目を選ぶこともできます。ここでは3種類の剣の特徴を詳しく見ていきましょう。
フェンシングの剣の特徴や仕様
フェンシングの剣と種目には3種類あり、それぞれの特徴について簡単に説明をします。
フルーレ(Fleuret)
フルーレは、フェンシングの中で最も基本とされる剣です。細くて軽く、全長は約110cm、重量は500g前後。突き技のみが有効で、相手の胴体部分(首から腰まで)が有効面とされています。
攻撃権(ライト・オブ・ウェイ)という独特のルールがあり、どちらが先に攻撃を仕掛けたかによってポイントが決まります。テクニックと駆け引きが重視され、まさに頭脳戦のフェンシングといえます。
エペ(Épée)
エペは最も重い剣で、約770gの重量があります。こちらも突き技のみが有効ですが、相手の全身が有効面です。頭から足の先まで、どこを突いても1ポイントとなります。
攻撃権は存在せず、同時に突いた場合は両者にポイントが入るのが特徴。よりリアルな「決闘スタイル」に近く、慎重な間合いの取り方とカウンター技が勝敗を分けます。
サーブル(Sabre)
サーブルは「切る・突く」の両方が有効な剣です。剣の刃全体を使って攻撃できるため、スピード感のある戦いが展開されます。ポイントンが入る有効面は上半身(腰から上)のみで、フルーレよりも激しい動きが特徴です。
攻撃権もルールとして採用されていて、主導権の奪い合いが見どころです。一瞬の反応で勝敗が決まるため、見ていて最も迫力を感じられる種目です。
フェンシングの攻撃権とは?
フェンシングの「攻撃権(ライト・オブ・ウェイ)」は、主にフルーレとサーブルで採用されているルールです。
基本的には「先に攻撃を仕掛けた方」に攻撃権が与えられますが、単に先に突いたからといって有効とは限りません。攻撃を開始した瞬間から相手の反撃を受けずに、的確に打突できた選手が攻撃権を保持します。
たとえば、相手の剣を上手くはじいてから攻撃した場合には攻撃権が移ります。つまり、フェンシングでは速さと攻撃だけではなく、正しい防御と「主導権の奪い合い」も勝利のために大切な要素となります。
フェンシングの種目は?
フェンシングは剣の種類によって、3つの個人種目と団体戦に分かれます。個人戦では、トーナメント方式で1対1の試合を行い、先に15点を取った選手が勝利します。
団体戦は3人1チームで行い、各メンバーが順番に戦うリレー形式。45点を先取したチームが勝利です。チーム内で戦略を立てる必要があり、個人戦とは違った面白さがあります。
また、男女それぞれのカテゴリーで試合が開催され、オリンピックや世界選手権で、国を代表する選手たちが熱戦を繰り広げます。
フェンシングの見どころは?
フェンシングの見どころは、なんといっても「一瞬の攻防」と「心理戦」にあります。わずか数センチの間合いを制するために、選手はミリ単位で動きをコントロールします。
フルーレでは、相手の動きを読み切る判断力と技の正確さ。エペでは、相手の隙を突くカウンターと防御のタイミング。サーブルでは、圧倒的なスピードと反射神経の勝負が見どころです。
さらに、電気ランプが点いた瞬間に歓声が上がる会場の一体感も魅力です。フェンシングはテレビや生観戦でも迫力が伝わりやすく、ルールを知れば知るほど奥深さを感じられるスポーツの一つです。
まとめ
フェンシングの剣と種目は、「フルーレ」「エペ」「サーブル」という3種類に分けることができます。剣の特徴によってルールや攻撃範囲がそれぞれ異なるため、同じフェンシングでも全く異なる戦い方が楽しめます。
一瞬の判断と集中力が勝敗を分けるこの競技は、まさに「心・技・体」を極める世界といえます。日本大乗選手の活躍も増え、今後ますます注目が高まるスポーツとなりそうです。
フェンシングの剣の違いやルールを理解すれば、テレビで試合を観るときも格段に面白くなります。ぜひ一度フェンシングの試合観戦を楽しんでみてはいかがでしょうか?













